ネットワークセグメンテーションとは?重要性や分け方をわかりやすく解説

御社のサーバーや機密情報が、営業担当者のノートPCや来客用Wi-Fiと同じネットワーク上にあるとしたら、どれほどの危険に晒されているかご存知でしょうか。

多くの中小企業では、ネットワークが一つの区画にまとめられており、もしも社員の一人がマルウェアに感染すると、その脅威は瞬時に広がり、顧客情報や財務データにまで被害が及ぶ可能性があります。これが、サイバー攻撃の被害が大きくなる最大の要因です。

「うちは中小だから狙われない」という考えは通用しません。防御の手薄な中小企業を狙い、そこを足がかりに大企業を攻撃するケースも増えています。こうした脅威から自社を守るために重要なのが、ネットワークを分離するネットワークセグメンテーションという対策です。

本記事では、ネットワークセグメンテーションの基本から、どこをどう分けるべきかを具体例を交えてわかりやすく解説します。

ネットワークセグメンテーションとは

ネットワークセグメンテーションとは、社内ネットワークを用途や部署、セキュリティレベルなどに応じて、より小さな論理的区画(セグメント)に分割することです。社員全員が使う大部屋だったオフィスを、部門や機密性に応じて壁で仕切り、部署専用の部屋や鍵付きサーバー室を設けるようなイメージです。

ネットワークが一つの区画しかない場合、仮に一台のパソコンがマルウェアに感染すると、その影響は瞬時に全体へ拡大し、機密情報を保管するサーバーにまで被害が及ぶリスクがあります。

セグメンテーションを導入すれば、問題が生じたセグメントを他の区画から切り離し、被害の拡大を防げます。これは、火災時に防火壁で隣の部屋への延焼を防ぐのと同じ原理です。

ゼロトラストセキュリティとの関係

ネットワークセグメンテーションは、近年の主流であるゼロトラストセキュリティを実現する上で、欠かせない要素です。

ゼロトラストとは、「何も信頼しない」という前提に立ち、社内外の境界に関係なくすべてのアクセスを検証し、許可されたものだけを接続させるセキュリティモデルのことです。従来の「社内ネットワークは安全」という前提に基づく境界型防御が、多様化した脅威に対して限界を迎えたことにより提唱されました。

ゼロトラストを実現するには、各ユーザーには業務遂行に必要な最小限のアクセス権のみを付与する「最小権限の原則」が欠かせません。この原則をネットワークの構造で実現する具体的な方法こそが、ネットワークセグメンテーションなのです。

ネットワークを細分化すれば、たとえば特定の部署の社員は、自部門が利用するサーバーやリソースのセグメントにしかアクセスできなくなります。仮に攻撃者がネットワーク内に侵入しても、最初にアクセスしたセグメント内に閉じ込められ、横方向への移動困難になります。

ネットワークセグメンテーションのメリット

ここでは、ネットワークセグメンテーションに取り組むメリットを整理します。

セキュリティ被害の局所化

最大のメリットは、サイバー攻撃を受けた時に被害を最小化できる点です。

たとえば、営業担当者が出張先で感染したノートパソコンを社内ネットワークに接続した場合、セグメンテーションがなければマルウェアが全体に広がり、顧客情報を格納したサーバーにまで侵入する恐れがあります。

しかし、営業部門が他の部門や重要なシステムと分離されていれば、感染の影響はその範囲にとどまり、他のセグメントへの波及を防げます。

これは「侵入を完全に防ぐのは難しい」という前提に立ち、被害を迅速かつ小規模に封じ込めるという、現代のセキュリティ対策の原則にもとづいています。セグメンテーションは、万が一の事態に備えたセキュリティの保険と捉えるべきです。

通信速度低下の防止

ネットワークを分割することで、特定セグメント内の通信量を抑え、全体のトラフィック混雑を緩和できます。

全社員が1本の道路(ネットワーク)を共有している状態では、大容量のファイル転送やウェブ会議が発生するたびに、他の利用者の通信速度が低下します。しかし、部署や用途ごとにセグメントを分けておけば、ある部門で発生した大量通信が他部門に影響することはありません。

脆弱なデバイスの隔離

セキュリティパッチの適用が難しいレガシーシステムや、旧型OSを搭載した端末、IoT機器など、脆弱性のあるデバイスを隔離できる点も重要です。

これらの機器が主要業務セグメントに接続されていると、攻撃者にとって格好の標的になります。セグメンテーションにより、こうしたリスクのあるデバイスを専用セグメントに分離し、他の重要システムとの通信を厳しく制限すれば、全体のセキュリティレベルを保ちながら運用が続けられます。

コンプライアンス対応の効率化

特定情報(例:個人情報やクレジットカード情報)を扱うセグメントを分離することで、監査や規制の対象範囲を限定できます。

たとえば、金融業や医療業など、厳格な規制の適用が求められる業界では、対象となるシステムが稼働しているネットワークが主な監査対象となるでしょう。ネットワーク全体に同じ基準を適用する必要がなくなり、コンプライアンス対応の時間とコストを軽減できます。

アクセス制御と監視の強化

セグメントごとに異なるアクセス制御ポリシーを設定することで、「誰が、いつ、どこにアクセスするか」を細かく管理できます。

人事部門には人事担当者だけ、開発部門には開発者だけといった具合にアクセス設定すれば、職務に応じた厳密なアクセス管理が実現します。また、ネットワークを細分化することで、監視範囲が狭まり、異常な通信やマルウェアの挙動などを早期に発見しやすくなります。

セグメント化するべき主なネットワークゾーン

ネットワークセグメンテーションは、単にネットワークを細かく分割すればよいというものではありません。リスクの大きさ、情報の機密性、利用者の属性といった観点から、どの領域をどのように分け、どこまでアクセスを許可するのかを慎重に設計する必要があります。

以下に、セグメント化を優先的に検討すべき主なネットワークゾーンを紹介します。

ゾーン名目的・特徴
部門別セグメント部署ごとに情報を分離。アクセス制限で情報漏洩リスクを抑制。
ゲストWi-Fi来訪者用ネットワーク。インターネットのみに接続、社内リソースから完全隔離。
DMZ(非武装地帯)外部公開用サーバーを配置。攻撃されても社内ネットワークへの影響を最小限に抑える。
サーバーセグメント重要情報が集約されたサーバー群を隔離。サーバー管理者・特定端末のみアクセスを許可。
IT管理者用セグメント管理用端末を分離。高権限アカウントの乗っ取り被害を防止。認証も厳格に設定。
物理セキュリティシステムカメラや入退室管理などを独立運用。IoT機器由来のリスクを業務ネットワークに波及させない。

部門別セグメント

最も基本的な分割方法が、部署や業務ごとにネットワークを分けることです。

たとえば、経理部門は顧客の支払い情報や財務データなど、機密性の高い情報を扱いますが、これらへのアクセスは経理担当者に限定されるべきです。開発部門には、ソースコードや知的財産が含まれるため、他部門のアクセスは不要でしょう。

このように部門ごとにセグメントを設けることで、情報漏洩リスクを最小限にとどめられます。

ゲストWi-Fi

来訪者や取引先の担当者向けに提供するゲストネットワークは、社内ネットワークとは完全に切り離す必要があります。

ゲスト用のネットワークには、セキュリティ対策が不十分な個人デバイスが接続されることを前提としなければなりません。これらが社内リソースにアクセスできてしまうと、重大な脅威となり得ます。

このセグメントでは、インターネット接続のみに限定し、社内サーバーやプリンターなどの業務資産への通信は遮断しましょう。

DMZ(非武装地帯)

DMZは、インターネットからのアクセスを受け付ける公開用サーバーを配置するためのセグメントです。ウェブサーバーやメールサーバーなど、外部接続が前提となるシステムをここに置きます。

DMZを社内ネットワークと分離することで、仮に外部から攻撃を受けた場合でも、被害をこのゾーン内に限定できます。DMZは、あらかじめ危険に晒されることを想定した防壁として機能し、万が一、サーバーが侵害されても、そこから内部ネットワークへ進入されるリスクを最小限に抑えます。

サーバーセグメント

ファイルサーバーやデータベース、基幹業務システムなど、企業の中核となる情報資産は、専用のセグメントにまとめ、他のネットワークから分離します。

このゾーンへのアクセスは、サーバー管理者および必要性のある端末のみに制限するとよいでしょう。たとえば、社員のPCから直接サーバーにログインしようとする通信は遮断し、業務アプリケーション経由など、限定的なプロトコルやポートにのみ通信を許可します。

IT管理者用セグメント

サーバー管理、ネットワーク機器の設定、セキュリティ監視などを担うIT管理者専用のセグメントです。

このゾーンでは、IT管理者用端末と業務用端末をネットワークレベルで分離し、管理者だけがアクセスできる環境を構築します。これにより、たとえ管理者アカウントが不正に利用されたとしても、ネットワーク全体の支配を許すリスクを減らせます。

また、セグメントに入る際の認証は通常よりも厳格に設定し、管理用アカウントの権限が悪用されるリスクを最小限に抑えましょう。

物理セキュリティシステム

監視カメラや入退室管理、各種センサーといった物理セキュリティ系のIoTデバイスも、業務ネットワークとは切り離して運用する必要があります。

これらの機器は、専用OSの使用やセキュリティ更新の遅れなどにより、脆弱性を内包していることが少なくありません。脆弱性は、攻撃者にとって侵入の足がかりとなる危険なポイントです。

物理セキュリティシステムを独立したセグメントに配置することで、業務ネットワークへの波及リスクを抑えられると同時に、トラブル時に物理セキュリティと業務システムの両方が影響を受けるような事態も防げます。互いの安定運用を両立するために欠かせない設計です。

ネットワークセグメンテーションの種類と実装方法

ネットワークセグメンテーションを実際にどのように実現するかは、技術的な側面から大きく二つに分類されます。以下では、両種類の違いを表で比較し、その上で論理的セグメンテーションが一般的である理由を解説します。

種類実装方法特徴メリットデメリット
物理的セグメンテーション物理的なネットワーク機器(ルーター、スイッチ)を完全に分ける異なるセグメント間の通信は完全に独立高いセキュリティ隔離性、構成が単純コスト高、構成変更が困難、配線が複雑化
論理的セグメンテーション仮想技術やソフトウェア定義の技術(VLAN、ACLなど)で分ける1台の物理機器内で複数のセグメントを構築低コスト、柔軟な構成変更、集中管理が可能設定ミスによる隔離性の低下リスク、設計の複雑さ

論理的セグメンテーションが主流となった背景

以前は、セグメントを分ける際は、物理的に別々のルーターやスイッチ、ケーブルを用意する必要がありました。

これが物理的セグメンテーションです。この方法は隔離性が高い反面、機器の購入・設置コストが高くなり、部門やオフィスレイアウトが変わるたびに大がかりな配線工事や機器の再設定が必要になるという課題がありました。

そこで一般化されたのが論理的セグメンテーションです。これは、VLAN(Virtual Local Area Network)という技術を用い、1台の物理的なスイッチ(ネットワーク機器)の中で、仮想的に複数のネットワークを区切る方法です。 

例えるなら、一棟のマンション(物理スイッチ)の中に、壁やドア(VLAN設定)を作って、複数の部屋(セグメント)を作り出すイメージです。

VLANを利用すると、機器の追加購入なしに、設定だけで「営業部門セグメント」「サーバーセグメント」「ゲストWi-Fiセグメント」といった異なるセグメントを構築できます。異なるセグメント間の通信は、通常、ファイアウォールやレイヤ3スイッチ(L3スイッチ)と呼ばれる機器を経由させることで、セグメントを跨ぐ通信を厳密にチェック・制御できます。

柔軟にネットワーク構成を変更しながらも、前述の「アクセス制御の強化」や「セキュリティ被害の最小化」といったメリットを低コストで得られるため、リソースが限られた中小企業にとって最も現実的な実装方法となっています。

さらに、近年ではソフトウェアによってネットワーク全体を定義・管理するSDN(Software Defined Networking)や、より細かく通信を制御できるマイクロセグメンテーションといった高度な論理的セグメンテーション技術も進化していますが、中小企業が最初に取り組むべきは、既存のネットワーク機器を活用したVLANによる論理的な区切りと、その境界に適切なアクセス制御リストやファイアウォールルールを設定することです。

ネットワークセグメンテーションに関するよくある質問

ここでは、ネットワークセグメンテーションに関するよくある質問に簡潔にお答えします。

ネットワークセグメンテーションとは何ですか?

ネットワークセグメンテーションとは、大きな社内ネットワークを、セキュリティレベルや用途に応じて、VLANなどの技術を用いて論理的に小さな区画(セグメント)に分割することです。

ネットワークセグメンテーションが重要な理由は?

ネットワークセグメンテーションは、サイバー攻撃を受けた際の被害を最小限に抑え、感染の拡大を防ぐために重要です。また、ネットワークの混雑を防ぎ通信速度の安定化を図り、コンプライアンス遵守に必要なアクセス制御を厳格に実現する土台となります。

どこからネットワークセグメンテーションをするべきですか?

最初にセグメント化するべきは、リスクが特に高い部分と機密性が特に高い部分です。具体的には、まずはゲストWi-Fi(信頼性の低いデバイスが接続されるため)と、サーバーセグメント(会社の機密情報が集約されているため)を他の業務ネットワークから完全に分離することをおすすめします。

ネットワークセグメンテーションのやり方は?

一般的には、VLAN(Virtual Local Area Network)という技術を用いて、既存のネットワークスイッチやルーターの設定を変更することで実現します。その上で、ファイアウォールやアクセス制御リスト(ACL)を使って、セグメント間の通信を厳密に制限するルールを設定しましょう。

ネットワークセグメンテーションを起点とした多層防御

ネットワークセグメンテーションは、現代の企業セキュリティにおいては必須の基盤です。中小企業においては、限られた予算とリソースの中で、セキュリティを高めるための最も費用対効果の高い投資の一つです。

サイバー攻撃は年々高度化し、侵入を防ぐことは極めて困難になっています。そのため、現代のセキュリティ対策では被害の最小化が重要であり、ネットワークセグメンテーションはこれを実現する中心的な手法です。

・セグメンテーションとダークウェブ監視の組み合わせ

サイバー攻撃者はまず、ダークウェブで御社やサプライヤーの従業員から漏洩した情報を入手し、それを使って正規のアクセス権限を装い侵入を試みます。

ダークウェブ監視は、こうした盗まれた情報、特に管理者や重要システムのアクセス権が売買され始めた段階でそれを検知し、アラートを発信します。これにより、侵入前に該当アカウントのパスワード変更や二要素認証の強化など、最後の防御策を講じることが可能になります。

内部はセグメンテーションで守り、外部の脅威はダークウェブ監視で察知する。この組み合わせが、現代における実効性の高いセキュリティ戦略です。

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